Story 老犬ライト2.幾つもの回想

こんにちは。

《あかるく、あいかつ、あおい鳥》です。

 

言葉を持っていないけれど

どんな犬や猫にも

思い出はあるのでしょう。

人に話すことはできないけれど

胸の底に 雪のように降り積もった

楽しい思い 悲しい思いが。

 

◎ライトの回想

 

もういつのことだったか よくは覚えてないけれど

その人は

まっ直ぐにワタシに向かって歩いて来た。

他にも若いのがいっぱいいるのに

それにはわき目もふらず

ワタシだけを見つめてまっ直ぐに――。

そして

ケージの前で足を止め じっとワタシを見つめる。

もう長いこと人から見つめられたことがないワタシは

なんだか怖くなって ふっと視線を外そうとした。

と ふいにその人の声が聞こえた。

「この子を引き取りたい」。 やさしそうな声だった。

こんなにも老いぼれたワタシを・・・。

驚いたことに その人の目がうるうるとふくらんで

大粒の涙が落ちてきた。ぽとぽと ぽとぽとと・・・。

シェルターを案内していたくんちゃんも驚いて

思わずそばに駆け寄り そっとその人の肩にふれた。

 

◎くんちゃんの回想

 

ある日電話があって しばらくお話をうかがいました。

その方が仰るには・・・

自宅の庭によく顔を見せる野良犬が

何匹かいるんですが 保護して飼ってやりたい。

でも 離れて見ていると餌を食べるけれど

近づこうとするとビクッとして逃げてしまう。

どうしたら捕まえられるでしょうか。

――という相談でした。

早速そのお宅に行って 詳しく状況を伺いましたが

その野良たちを捕まえるのは難しいことが分かりました。

たとえ捕まえることが出来たとしても

すぐに家庭で飼えるようにはならないでしょう。

しばらく青い鳥で預かって人間に慣れさせなければ。

でもシェルターは満杯で 世話する人手も足りない。

と申し上げました。

そしてシェルターの犬の里親様になって頂けないか

とお願いしたところ すぐにシェルターに来て下さり

「この子をぜひ」と老犬のライトを指さしたのです。

 

◎最も汚れた犬

 

7月11日に保健所から引き取った子は

これまで引き取ったどの子よりも汚れ

垢やかさぶたで体中に毛玉がこびり付き

ドブのような悪臭がしていました。

人に慣れているので

飼い主に捨てられたのか迷子か分かりませんが

汚れがひどかったのでシャンプーしました。

何回もお湯をかけ洗ったのですがドブ臭さはとれません。

どんな環境で生きていたのでしょうか。

いくら洗っても汚れの毛玉がたくさんついています。

老犬なのであまり負担をかけないように

毛玉を全てカットすることにしました。

毛玉は切っても切ってもなくならず

カットしているうちにどんどん短くなって

虎刈りになってしまいました。

汚れきってもしゃもしゃの毛をカットしてやると

こんなに可愛い 輝く目をしていました。

くっきりと首輪の後もあります。

飼い犬だったことは間違いありません。

 

◎ライトの回想

 

飼われていたような気もする。

ずいぶん昔のことだ。

Dog year といって

犬は人間の何倍もの速さで歳をとると聞いた。

だからぼんやりして もうよくは覚えていない。

子犬だった頃は抱っこされ可愛がられていた。

散歩にもよく連れて行ってもらった。

公園で子どもと一緒に駈けたこともあった。

歳をとって あまり歩けなくなり

小屋でとろとろと眠る日を送っていると

ある日 車に乗せられて 遠くに連れて行かれた。

山道で車から降ろされ 首輪とリードを外され・・・

車は ワタシを置いて行ってしまった。

ワタシはそこに佇んで 車が戻って来るのを待った。

何日も待ち続けた。

そして お腹が空いたので歩き出した。

何処をどう歩いたのか覚えていない。

若い頃なら どんなに遠くても

臭いをたどって家まで帰って行けただろうに・・・。

それからは 雨に打たれ 風に吹かれ

汚いといわれ 人から大声で脅されたり

石を投げられたり 棒で追われたりしながら

あちらこちら ふらふらと さ迷い続けた。

人から隠れてドブの中で暮らしてたこともある。

時どき食べ物をくれる人もいた。

けれど もう疲れてしまい 道端にうずくまって

動けなくなっているところを捕まったようだ。

 

◎ライト(Right)という名前

 

 

「歳をとったから」という理由で

長年飼った犬猫を捨てる人がいます。

かなしいけれど それが日本の現実です。

この子を保健所から引き出す際に

右田と言う地区で保護したと聞いたので

右の意味でライトという名前をつけました。

でも、今になって思うと

なんて象徴的な名前だったのでしょう。

Right

「右」の他に「正しい」「真っ直ぐ」「しかるべき」

「権利」などの意味を含むこのネーミングは

老いても明るく真っ直ぐな瞳にぴったりでした。

そして

シェルターに来てから3か月後に

しかるべき里親様との出会いを叶えたのです。

 

続く・・・

 

応援よろしくお願いします。
にほんブログ村 その他生活ブログ ボランティアへ