Storyかよ2.夜の訪問

こんにちは

《あかるく、あいかつ、あおい鳥》です。

 
Y市の保健所に
青い鳥で譲渡した犬に似た子が2匹収容された
との情報が寄せられ
譲渡先には何度電話しても繋がらず 返事もありません。

ご近所の話では

「もうだいぶ前から犬の姿は見ていない」

とのことです。
私たちは直ぐに譲渡先を訪ねることにしました。
 

○●○●○ 2016年13日 ●○●○●

夜の訪問
 
清水代表にスタッフが1人付き添い
夜の7時頃に若夫婦のお宅を訪ねました。
辺りは既に暗くなっていますが
家には明かりが灯り在宅しているようです。
しかし玄関の戸は鍵がかかっており
ドアホンを鳴らしても返事がありません。
扉をノックして何度も呼びかけましたが
家の中はひっそりとしています
電気を点けたまま外出しているのだろうかと思い
しばらく待つ積りで家の横を流れる川面を見つめていました。
「ペコと寛平はこの河原にずっと繋がれていたのか」
と思うと哀れさがつのります。
 
玄関先で・・・
 
10分ほど経ったでしょうか、そっと玄関の戸が細く開き
中から外の様子をうかがっているようです。
私たちが前に立って「今晩は」というと
相手はキャッと悲鳴を上げて再び戸を閉めました。
「ちょっとワンちゃんたちのことで
伺いたいことがあって来ました」と何度か告げると
ようく戸が開きましたが
奥さんが戸口に立ち塞がるようにして
中に招き入れる様子はありません。
そこで玄関先で押し問答のような形になりました。
 
       「ペコちゃんと寛平君に会わせてもらえませんか?」
       「いま、ちょっと・・・、いません」
       「いないって、どういうことですか?」
       「アレルギーで、アトピーが出たので・・・
                 よそに預けています・・・
       「よそって、どちらですか?」
       「実家の方に・・・」
       「ご実家は?お近くでしょうか?」
       「・・・・・・・」
       「どうしても会わせて頂きたいのですが」
       「ちょっと遠いので・・・」
       「構いません。今から連れて行って頂けませんか」
 
奥さんは一度奥に引っ込みましたが
すぐに旦那さんと一緒に出て来ました。
夫婦は無言のまま自分たちの車に乗り込みました。
私たちも慌てて
川沿いの道路に停めていた車に飛び込みました。
 
カーチェイスのように
 
夫婦の乗った車は夜の道路をひた走って行きます。
行く先も知らないまま後を追う私たちのことなど
「知ったことか」とばかりスピードをゆるめる気配もありません。
そのまま20分ほど走ったでしょうか
やがて県道から細い脇道に入り
暗い細道をくねくねと曲がって行きます。
「私たちを振り切ろうとしている?」と思うほどです。
今になってその時のことを思い出すと
不案内な町の知らない暗い道路で
カーチェイスまがいのことをやらされ
よくも脱輪せずに追跡できたものだと
胸をなでおろす思いです。
 
脇道を10分ほど行ってから
前の車はようやく住宅街に入り、空き地に止まりました。
若夫婦は私たちが車から降りるのも待たずに
暗い住宅地を歩いて行きます。
私たちは必至で後を追いました。
「清水代表を独りで来させずに良かった」と思ったものです。
そしてある家の前で若夫婦は立ち止まりました。
「ここです」と奥さんが言った切り
自分でドアを開こうとも叩こうともしません。
「ご実家でしょ?ご自分で声をかけて下さい」
と頼んでも、ぐずぐずと渋り、チャイムを押そうともしません。
明らかに実家に入りたくないと思っている様子です。
旦那も黙ったまま玄関先に突っ立っています。
私はぞっとしました。
「こんな若夫婦に、青い鳥の子を2匹も
譲渡してしまったのか!」と慄然としました。
 
実家での話し合い
 
奥さんは急かされてようやくチャイムを押しましたが
母親が顔を出してもそっぽを向いて黙ったままです。
見かねて代表が口を開き事情を説明しました。
やがて父親も奥から顔を出しましたが
玄関に立ったままで部屋に上がらせようともしません。
夜分突然訪れた私たちに不信感もあらわです。
 
        「私どもが譲渡した2匹のワンちゃんを
         娘さんがこちらに預けたと言っているので
         確かめに伺いました」
        「・・・あの、もうこちらにはいないのですが・・・」
        「では、どちらにいるのですか?」
        「保健所に渡しました」
 
それから玄関先に立ったまま2時間ほど話したのですが
かいつまんで要約を述べます。
 
娘さん夫婦はかつて祖母が一人で住んでいた家が
空いたので今はそこに住んでいる。
昨年子犬を2匹どこかで貰ったと言っていたので
お母さんが見に行くと、2匹は痩せこけ
あまりご飯をもらっていないようなので引き取ったそうです。
 
若い夫婦も最初は可愛がり
昼は外に繋いでいたが、夜は室内に入れていました。
そしてご近所で聞いたように
昼も夜も1日中河原に繋ぎっ放しで
餌もろくに与えないようになったのでしょう。
娘さんに「何でそんなことをしたの?」
「犬が可哀そうだと思わなかった?」と聞いても
下を向いたまま無言です。
同じ問いを旦那さんに投げかけても
口ごもるだけでらちがあきません。
 
3月頃、実家で2匹を引き取ってからは
どのように飼っていたのかを尋ねました。
室内には入れず裏に繋いでいたと言います。
でも近所から「鳴き声がうるさい」と苦情を言われ
保健所に連れて行ったそうです。
 
子が子ならば、親も親です。
私たちは唖然とするやら憤然とするやらで
何ともやり場のない気持ちを抱えながら
玄関先に立ったまま2時間ほど話しました。
 
あなたたちのしたことは犯罪です
 
「可愛い」だけで簡単に犬猫を飼う人は、簡単に捨てる人
・・・ということを目の当たりに見るような家族でした。
こいう人たちには話すだけ無駄だろうと思い
環境庁と警察庁のポスターのコピーを突きつけて
「あなたたちのしたことは犯罪です」と言うと驚いて
自分たちがしたことの重大さにやっと気づいたようです。
 
 
「今後二度と動物は飼わない」と約束してもらい
私たちはその一家に背を向けて帰りました。
 
続く・・・
 

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