あいかつイソップ第4話 もうひとつの南極物語

おはようございます

《あかるく あいかつ あおい鳥》

 

10月13日の西日本新聞に

「南極物語」タロとジロ守った“第3の犬”

という感動的な記事が載りました。

覚えていらっしゃる方も多いと思いますが

それに想を得てこんな寓話を思いつきました。

(*以下は新聞記事をもとに書いたものです。)

 

あいかつイソップ

第4話

 

私は60年も前に死んだ犬です。

名前は「リキ」と呼ばれていました。

「南極物語」という映画で有名になった

あのタロとジロのそばにいました。

 

1958年

日本の南極越冬隊が猛烈な悪天候に襲われ

隊員全員が基地から脱出したときに

私たち15匹の樺太犬は極地に残されました。

 

ブリザードが吹き荒れる中

私たちはみんな鎖に繋がれ

人間たちが遠ざかって行くのを

見送るほか仕方がありませんでした。

 

雪と氷の中で重いソリを引いて

人間の仕事を手伝って来た私たちを

置いてってしまうの?

私たちは必死にウオ~ンと鳴きました。

 

でも人間は戻って来てくれませんでした。

吹き荒れるブリザードの中で

私たちは体を寄せ合っていました。

その中にまだ幼いタロとジロもいました。

 

人間が置いていった最後の餌も

食べ尽くしてしまい

私たちは空腹に苦しみました。

やがて8匹は

必死に首輪や鎖から逃れましたが

残る7匹は鎖を外すことが出来ず

空腹のまま氷雪に埋もれて息絶えました。

 

私も、タロとジロも、なんとか 

鎖から逃れることが出来ました。

若くたくましい壮犬たちは

餌を求めて基地を離れて行きましたが

幼いタロとジロは

自力で餌を獲ることが出来ません。

 

私はタロ・ジロよりも7歳年長でした。

鎖を外すことの出来た私は

他の仲間たちと同じようにどこにでも行けたのですが

幼い2匹を見捨てることは出来ませんでした。

 

人間と一緒にいた時も

タロとジロに自分の餌を分け与えたりして

何くれとなく2匹の面倒を見ていたので

それは当然の成り行きでした。

 

翌年 南極観測隊が昭和基地に戻って来た時に

奇跡的にタロとジロが生き延びていて

大きな話題になったそうですね。

 

それから9年後の1968年

基地のそばの雪の中から

1匹の樺太犬の死骸が見つかりました。

私です。

 

幼いタロとジロの親代わりだった私は

基地に留まって必死に食料を探し

2匹に与えていました。

 

若い2匹はやがて狩りを覚え

アザラシを獲ったりしていました。

私も必死に生きようとしましたが

年長の体で極寒に耐えることが出来ず

徐々に体力を失って行き

とうとう力尽きて倒れました。

 

タロとジロが発見された時

私も近くに横たわっていたのですが

その時は雪に埋もれ

遺体を見つけて貰えませんでした。

 

でも タロとジロが

生きて日本に帰れただけで

私は満足なんです。

 

当時 私を「リキ」だと気づいてくれた人が

50年経ってからも

私のことを多くの人に知って欲しいと

新聞で話してくれました。

 

以上が私の物語りです。

 

*****

 

ところで今

日本は、日本人は

ひどいことになっているそうですね。

 

悪質ないじめや、幼児虐待や、ハラスメントが横行し

わが子を真冬にベランダに追い出したりして

死に至らしめるなど

耳を覆いたくなるような事件が

頻発しているようです。

 

そんな思いやりのかけらもない人間が

増えてしまったのは何故なんでしょう?

いいえ人間はもともと冷酷なのかもしれません。

 

戦争の時には何千匹もの家庭犬が

軍用犬として徴用され

敗戦が濃くなると人間だけが日本に逃げ帰り

犬たちは戦地に置き去りにされたそうです。

身を挺して兵隊さん達の

命を守ってくれた仲間なのに。

人間は何と勝手な生きものでしょう。

 

今も日本では

何万匹もの犬猫が邪魔もの扱いされ

ガスで残酷に窒息死させられているそうですね。

 

犬や猫をペットショップで買って

いっぱい癒してもらい

幸せ気分を味わわせてもらったあげくに

「可愛くない」「年取った」「病気になった」

と言って保健所に捨てる人が

後を絶たないとか・・・。

 

ガスで窒息死させられる犬や猫に較べたら

極寒の地でブリザードに襲われながらも

タロとジロを守って死ねた私は

幸せだったのかも知れませんね。

 

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