イソップ第十話:話せない犬が話したかったこと

おはようございます

 

1月17日の朝 

1匹の犬が逝きました。

突然LINEで告げられた訃報に

愕然とし言葉になりませんでした。

そして胸を過ぎったのは

「無念だったろうに・・・」

というやり切れなさでした。

 

いいえ

その子の気持ちを代弁してやれる

言葉が見当たりません。

どんな思いで逝ったのだろう。

その子の気持ちを

どう遺してやったらいいのだろう

と思いあぐね こんな形になりました。

 

あいかつイソップ

第十話 銀次郎

その子が青い鳥に来たのは

11月25日

佐波川沿いのシェルターに

冬の冷たい風が吹き始める頃だった。

 

飼い主に車で連れて来られた。

青い鳥は保健所からの引き取りが基本だが

よほどの理由(わけ)があったのだろう。

 

その日ぼくは突然車に乗せられて出かけた。

着いたところには犬がいっぱいいた。

ぼくが車から降ろされると

みんながしきりに吠えている。

 

え、いやだ こんなとこ!

はやく帰ろうよと車をふり返ったけど

ご主人はバタンと車のドアを閉めてしまった。

ぼくも乗せてと頼みたかったけれど・・・

わんわんわんとうるさいくらい

ぼくに向かって吠えかかる奴らに

吠え返してやりたいけれど・・・

 

ぼくには出来ない。

ぼくは声が出せないんだ。

 

犬の名前は銀次郎といった。

青い鳥に「引き取って欲しい」と相談があり

理由をたずねるとこんな話だった。

よい子で長年かわいがって来たけれど

あるとき保健所からこんな報せがあった。

近所から通報があったというのだ。

「苦情を言って来た人は仕事が三交代制で

昼に眠らなければならない。

でも犬の鳴き声がうるさくて眠れない。

何とかしてくれ」・・・と。

 

飼い主はご近所に迷惑を変えてはいけないと思い

獣医に相談しやむを得ず声帯の切除手術をした。

 

するとまた保健所に通報があった。

「まだ声が出てる。うるさい」との苦情が。

飼い主は再び獣医さんに相談し

今度は喉の骨も手術で除去した。

泣く泣く行なった決断らしい。

 

それでも「まだうるさい」と言われ困り果て

青い鳥を頼って相談して来た。

もう保健所に連れて行くしかないと言うので

やむなく引き取ることにした。

 

こうして銀次郎は青い鳥に来た。


声帯も喉骨も切除されたはずなのに

かすれた声で細々と鳴くことは出来た。

青い鳥に来た当初は気持ちが不安定だった。

9年間も一緒にいた飼い主から離されて

見知らぬ場所に置いて行かれたのだから

それも無理からぬことだろう。

 

11月26日

 

青い鳥に来た翌日。

声を出すことは出来ないが

それでも銀次郎はしっぽを振って

何とかスタッフに慣れようとしていた。

 

ご主人はちょっとの間だけ

ぼくを置いて行ったにちがいないさ。

きっと迎えに来てくれるはず。

それまでぼくは

いい子にして待っていなければ・・・

 

でも飼い主は迎えに来なかった。

銀次郎は少しずつ慣れて行き

皆に「銀ちゃん」と呼ばれて可愛がられた。

 

1月7日

 

日本列島を寒波が襲い

山口県にも雪が降る中で銀ちゃんは年を越し

雪をものともせず元気に散歩に出かけた。

きみはどこにでもいる気のいい犬で

決して問題のある子じゃなっかったはずだ。

 

犬が鳴くのは当たり前。

何か言いたいから鳴いているのに

人間は銀ちゃんの声を奪った。

シェルターに来て

好きなだけいくらでも鳴いていいのに

もう声は出ない。

きっとお家にいた時は

鳴く度に叱られて来たのだろう。

これからはここでノンビリ暮らしながら

新しい飼い主さんとの出会いを待とうね

と思っていたのに・・・

 

1月16日

 LINE 

よしみ :銀次郎 9歳
昨日までとても元気で変わりなかったのですが

今朝急変して

病院に連れて行く前に亡くなりました。
死因は不明です。

 

清水久仁子:銀次郎くん

皆さんの愛により良い子になってくれ
安心していましたが

やはり散歩に出るといつも

車を気にして目で追っていました。
きっと飼い主さんが迎えに来られるのを

待っていたのだと思います。
今朝すぐに飼い主さんに電話して

容体を伝えるとすぐに飛んで来られ
飼い主さんの腕の中で息をひきとりました。

マキクリ: 銀ちゃん、もういっぱい吠えなね!
ご冥福をお祈りいたします。
ひたろう :言葉になりません
私がシェルターへお伺いさせて頂いたのが

銀次郎くんがシェルターに来た翌日でした。
そのためか私の車が

家族が迎えに来たと勘違いさせてしまったようで

嬉しそうに尻尾を振っていたのを覚えています。
かわいそうなことをしてしまったと

あの日申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
ようやく家族に再会でき

腕の中で旅立てて幸せだったことと思います。
銀次郎くん、天国でたくさん吠えて

お友達みんなと遊んでね🌈

銀ちゃん

突然逝ってしまうなんて・・・。

きみが人を好きだったことは

この映像を見れば誰にでもわかるはずだよ。

それを無理やり声を奪うなんて!

非常な人間たちを許してほしい。

そして心に誓う。

みんなに分かってもらおうと思う。

「犬の十戒」

これはきっと銀ちゃんが

話したかったことなんだろうね。

 

【犬の十戒】

1.私と気長につきあってください。
2.私を信じてください。それだけで私は幸せです。
3.私にも心があることを忘れないでください。
4.言うことをきかないときは理由があります。
5.私にたくさん話しかけてください。
  人のことばは話せないけど、わかっています。

6.私をたたかないで。
  本気になったら私のほうが強いことを忘れないで。
7.私が年を取っても、仲良くしてください。
8.私は十年くらいしか生きられません。
  だからできるだけ私と一緒にいてください。
9.あなたには学校もあるし友だちもいます。
  でも私にはあなたしかいません。
10.私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください。
  どうか覚えていてください。  
  私がずっとあなたを愛していたことを。

 

青い鳥の活動は
皆様のご寄付で支えられています。
私たちが「あいかつ」を続けて行けますように
どうかご支援をお願い致します。
http://aoitori-aigo.org/
里親募集/ボランティア募集
ご支援の方法/ふるさと納税/よくある質問
等を掲載しております。

 
応援よろしくお願いします。
にほんブログ村 その他生活ブログ ボランティアへ