Storyペル3.幾たびの出会いと別れ

こんにちは。

《あかるく、あいかつ、あおい鳥》です。

 

2015年6月

―― 戻って来た片目の子 ――

 

片目の猫は6月初めに青い鳥に戻って来ました。

それからひと月ほど経ってから・・・

「この子と一緒に暮らしたい」という方が現れました。

80歳過ぎの1人暮らしの女性です。

青い鳥の譲渡の条件として

「高齢者には後見人がいなければ譲渡できない」

という決まりがあります。

それまでもこの方から「猫を飼いたい」

という申し出が何度もありましたが

身近な後見人がいないので断っていました。

 

でも今回は事情が違います。
せっかくトライアルした家のお嬢さんが
猫アレルギーになって戻ってきたこの子には
次にいつトライアルのチャンスが訪れるのでしょう?
当分の間「引き取りたい」という声は
かからないだろうと思います。
でもこの子に幸せになって欲しい・・・
あれこれ悩んでいた時にふっと
何度も「猫と暮らしたい」と申し出ていらした
あの方、Aさんのことを思い出しました。
 
Aさんはご高齢なので譲渡は無理だけれど
特別に「長期の一時預かり」という形で
この子と一緒に暮らすことは出来ないだろうか?
それがお互いの幸せになるのならば・・・と決心して
Aさんに預けてみようと思いました。
「片目というハンディキャップのある猫ですが
一時預かりという条件でもよろしいですか」
と伝えたところ Aさんは大喜びです。
 
2015年7月10日
―― ひとり暮らしの女性と ――
 
キャリーから猫がそろりと顔をのぞかせ
片目で辺りをぐるりと見まわします。
「まあ可愛い!」とAさんが声を上げます。
動物を可愛いと思う感性は
小学生の少女も高齢の女性も変わりありません。
 
猫はここが自分の新しい住家と察したように
Aさんが差し出す両手にすり寄って行きます。
人の気持ちが読める賢い子なんです。
またAさんも待ち望んだ猫との同居で
にこにこと顔が輝いています。それを見て
やはりこの組み合わせに間違いはない」
と確信しました。
 
こうしてAさんと片目の女の子は出会い
1人と1匹の幸せな暮らしが始まりました。
メス猫は「ペル」と名前をつけられました。
雨の中 瀕死の状態で保護されてから
初めて正式につけてもらった名前です。
 
Aさんはとてもペルちゃんを可愛がり
ペルちゃんもAさんに甘えます。
寂しいお年寄りと 寄る辺のない動物。
その幸せなマッチングを幾つも見て来ましたが
「後見人が必要」という条件にはばまれ
ペットを飼うことを諦めるお年寄りは多いのです。
その解決方法を模索している最中ですが
私たちも時々連絡して様子をたずねたり
ノミ・ダニ駆除の薬を打ちに訪れたりしました。
 
Aさんとペルちゃんが暮らす部屋には
大きな字でこう書かれた紙が貼ってあります。
こうして平穏に時が流れました。
Aさんとペルちゃんの幸せな2年間は
残念ですが1枚も写真が残っていません。
 
2017年4月18日
―― Aさんとの別れ ――
 
ある日Aさんから連絡が入って来ました。
 
「これまで体はあまり動かないけれど
何とかペルと暮らして来ました。
とても楽しかったです。でも・・・
とうとう入院することになってしまいました」
 
私たちはすぐにペルちゃんを引き取りに
Aさんのお宅に向かいました。
Aさんの家でのぺルちゃん
別れがきたことを知り、神妙な面持ちです。
久しぶりに会うペルちゃんは
なんと閉じていた右目も開いていました。
Aさんが近所の獣医さんに診てもらって
ここまで回復させて下さったのです。
でも瞳も濁ってあまり見えていないようです。
やはりペルちゃんは生まれつきの片目ではなく
雨の山中に捨てられ
生きるか死ぬかの瀬戸際で光を失ったのでしょう。
人間の非情が潰した片目です。
 
Aさんはペルちゃんを抱いて泣きました。
少女のようにぽとぽと涙を流しました。
 
「この子が私の生きがいでした。
ペルがいたから楽しく暮らして来れた。
でも、私がいなくなったらペルは・・・。
幸せになってね。幸せになるのよ」
 
・・・と何度もペルちゃんに話しかけています。
ペルちゃんも別れが分かったのでしょう
哀しそうにニャーニャー鳴きます。

車の中でもペルちゃんは泣き続け・・・
その声に気持ちを揺さぶられながら車を走らせました。
でもシェルターの部屋に入れると
ペルちゃんはぴたっと静かになりました。
観念したのかケージに引きこもったままじっとしています。
この眼は
幾たびの出会いと別れを見て来たのでしょう。
そして 繰り返しになりますが
この眼にまた安らかで幸せな世界を
見せてあげたい・・・と願うばかりです。
ペルちゃんをご家族に迎えて下さる
里親様をお待ちしております。
 

【青い鳥の詳細につきましては】

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