おはようございます。
《あかるく、あいかつ、あおい鳥》です。
犬や猫は人とは違います。
だからかれらの心理や感情を擬人化して描くのは
あまり良いとは思いません。
でも かれらにも感情はあります。
喜んだり、怒ったり、哀しんだり、楽しんだりしています。
動物好きの人ならば、鳴き声や仕草で感情を読み
人間の言葉に替えて理解していることでしょう。
確かに犬や猫は人とは違います。
でも三人称の「かれら」では、語り切れないこともあります。
だから一人称で動物の口を借りて
書かれた動物文学やコミックもあるのですね。
これから始める「空」という犬のStoryですが
「空」が歩いて来た道の暗さと明るさと
ようやく辿り着いた居場所の安らぎは
どうしても 傍観者的な三人称ではなく
「ぼく」という一人称で話してみたいと思うのです。
どうかお許しください。
~*~ 2016年5月20日 ~*~
ぼくは港で生まれた。
お母さんのことも兄妹のこともはっきりとは覚えていない。
「5月20日 港の子犬15匹保護 生後1か月ほど」
と青い鳥動物愛護会のDiary書かれている
15匹のうちの1匹がぼくらしい。
「その内の7匹の預かり先がまだ決まりません。
ボランティアさんに電話で当たっている最中です」
ぼくは既に預かり先が決まったグループなのか
それとも まだ決まっていない方なのか それも分からないけれど
そんな慌ただしい緊迫感の中で
ぼくは兄妹達といっしょに ただクークーと鳴いていた。
~*~ 6月11日 ~*~
ひと月半になるとワクチンを打たれ
ぼくの里親募集の記事がサイトに掲載された。
性格・特長
優しい顔をした白の男の子。耳が垂れています。
元気いっぱいで人が大好きな甘えん坊です。
大将くんというのは ぼくのことらしい。
きっと15匹の中でいちばん元気で目立っていたからだろう。
何件かの問い合わせがあった。
青い鳥のスタッフさんは慎重に条件を確かめている。
貰ってくれるなら誰でもいい、というわけにはいかないらしい。
犬を飼える環境か?
自宅か借家か、戸建てか集合住宅か?
年齢は、家族構成は、家族全員が承諾しているか?
責任を持って終生飼い、可愛がってくれる人に譲渡したい。
ペットショップで誰でも買える商品じゃない。
命を護る保護団体だからこそ、条件は厳しいんだって。
それって当然だと思う。
ぼくらは使い捨ての玩具じゃないんだから。
~*~ 6月26日 ~*~
ぼくのトライアルが決まった。
若いご夫婦で とてもぼくを可愛がってくれそうだった。
ぼくは安心して抱っこされお家に向かったんだ。
でも 1週間後
ぼくは青い鳥に戻された。
~*~ 7月3日 ~*~
「仔犬の飼育が思ったより大変だった」
・・・というのが理由だそうだ。
「かわいい、というだけでは動物は飼えない。
飼うには労力や費用などの負担が伴う。
それを承知で引き取っても、いざ一緒に暮らしてみると
最初の頃の夜鳴きやトイレの始末に耐え切れずに
戻されることがたまにある。
それを確かめるために1週間のトライアル期間を
設けているのだから構わないのだけれど」
・・・と青い鳥の女の人は肩を落としてる。
ねぇ ねぇ 青い鳥の人、ぼくは大丈夫だよ。
ぼくは元気だから。
女の人はぼくをぎゅっと抱いて
「また頑張ろうね」と言った。
ぼくはクゥ~ンと思いっきり甘えて
女の人の顔をぺろぺろ舐めてやったんだ。
続く・・・